一風堂からプラントベースラーメンが誕生! 植物性“豚骨風”ラーメン のヒミツ
1985年、福岡に誕生した「博多 一風堂」。当時、男性客がメインだった博多ラーメンのイメージを払拭すべく、「女性が一人でも入れるラーメン店」をコンセプトにオープンしました。
その後、福岡の名物「博多豚骨ラーメン」を看板メニューとし、国内で133店舗、海外にも277店舗(2022年3月末時点)と成長を続けています。
2021年には植物由来の未来志向ラーメン「プラントベース赤丸」の販売を開始。現在に至るまで様々なプラントベースのメニューを展開しています。なぜ名物の豚骨スープをプラントベースで開発するに至ったのか、その後の反響は。開発担当の冨田さんにお話を伺いました。
お客様の声をきっかけに「誰もが楽しめるラーメンを」
―weeeat!編集部
先日プラントベースラーメンをいただいたのですが、スープがとても濃厚で動物性食材を使用していないの!? とびっくりしました。プラントベースラーメンを開発されたきっかけを教えてください。
―冨田さん
開発がスタートしたのは5年ほど前です。当時はコロナ前で、海外からたくさんのお客様がいらっしゃいました。ある時、外国人のお客様から「豚骨スープは食べられないので、お湯に変えてほしい」という声をいただきました。豚骨スープを食べられない理由は、ヴィーガン・宗教・健康など様々でした。
ラーメンスープは「豚骨スープ・油・かえし(醤油など味付けのたれ)」から出来ており、味の重要な決め手となるのが豚骨スープです。豚骨スープを抜いてしまうと一風堂本来の味を楽しめなくなってしまいます。
海外店舗では、醤油や味噌味のプラントベースラーメンを独自に開発し提供しているところもあります。しかし豚骨スープ味のプラントベースラーメンはありませんでした。「せっかく日本の一風堂に来たのだから、お湯でもいいから食べたい」と来店してくれるお客様に、看板メニューである一風堂の豚骨スープを楽しんでもらいたいという想いから、開発は始まりました。
不二製油との共同開発! クリーミーな豚骨風スープ
―weeeat!編集部
プラントベースラーメンにはどのようなメニューがあるのでしょうか。
―冨田さん
一風堂の看板メニューで創業当時からある原点の味、「赤丸」「白丸」をプラントベースラーメンにするべく、研究を重ねました。白丸は豚骨スープの旨みを追求したシンプルな味。赤丸は辛みそと香味油が味の奥行を表現した味です。そして出来上がったのが「プラント赤丸」と「プラント白丸」です。
プラントベースラーメンとして最初に開発を始めた「プラント赤丸」は、コク深い豆乳スープに香味油の深みを持たせ、辛味噌でより味わい深いスープに仕立てました。複雑な豚骨風味と香りを再現した自信作です。
「プラント白丸」は一風堂独自のシルキーな豚骨スープの味を再現しつつ、トリュフオイルの食欲を誘う香りで、また飲みたくなるようなスープに仕上がりました。
―weeeat!編集部
プラントベースの豚骨スープは不二製油さんと共同開発されたと伺いました。
―冨田さん
ちょうど私達がプラントベースラーメンの開発を考えていた時に、不二製油さんからお声掛けをいただきました。プラントベースフードの開発を長年行っている不二製油さんの知識と、豚骨ラーメンに関する我々の知識と経験を掛け合わせて、店舗用のスープを開発しました。
植物性のプロ×ラーメンのプロ
―weeeat!編集部
開発する上で苦労したことはありますか。
―冨田さん
開発をスタートさせるにあたり、私達はヴィーガンやプラントベースフードに関する知識を持っていませんでした。そこでまずはヴィーガンをはじめとするプラントベースフードについて学ぶことから始めました。宗教上の理由だけではなく地球環境保護の側面など、勉強になることばかりでしたね。
一番苦労したのはスープ作りです。不二製油さんは私達と共同開発を進める前から植物性の油脂を研究されていたこともあり、豚骨スープに対する認識の違いは大きな壁となりました。それぞれが思い描く完成図のずれを調整しながら何度も、何度も試作を繰り返しました。
豚骨スープを知り尽くした我々と、不二製油さんの技術力があったからこそ、豚骨スープに引けを取らないものが完成しました。
―weeeat!編集部
麺やトッピングの開発はどのように進められたのでしょうか。
―冨田さん
一風堂の麺は卵白を使用しているので、卵不使用にするのはもちろん、原材料にもこだわっています。通常の小麦より栄養価の高い全粒粉を選び、さらに整腸効果の高い食物繊維を追加することで、健康にも配慮した麺に仕上がりました。
トッピングにはプラントベースのチャーシューを乗せています。当初、プラントベースフードを得意とする工場へ試作をお願いしましたが、思うようなものは出来上がらず、開発メンバーで試作を重ねサンプルを完成させました。
インゲン豆とグルテンを使ったプラントベースのチャーシューは本物と見紛うほどの出来でしたが、工場で再現するのは難しく、変更を重ねて今のチャーシューが完成しました。
現在は最初に開発したものにレンコンを追加して触感を足し、味も調整を重ねています。チャーシューに関してはもっと本物に近い商品ができると確信しており、今後も研究開発を進めていきたいですね。
↑プラントベースフードのチャーシュー
自宅でも楽しめる 一風堂のプラントベースラーメン
―weeeat!編集部
プラントベースラーメンを家で楽しめるセットも発売されているんですね。
―冨田さん
2021年に登場したプラントベースラーメンは、当初限られた店舗でしか販売しておりませんでした。しかし販売を開始した時の反応は今までにないものでした。そこでみなさまのご要望にお答えすべく店舗にいらっしゃることの出来ない方や、ご自宅でも気軽に楽しみたい方に向けて「おうちでIPPUDO」シリーズでもプラントベースラーメンを開発しました。
―weeeat!編集部
店舗で提供しているスープと同じものなのでしょうか。
―冨田さん
不二製油さんと共同開発したスープをそのまま濃縮タイプのスープにすることはできず、全く新しい視点で一から開発をしました。「おうちでIPPUDO」のプラントベースラーメンも、シルキーな豚骨を再現しており、植物性だけだとは思えないコクと深みのあるスープに仕上がりました。
乾麺タイプですから日持ちもしますし、全国どこでも配送できるのでプラントベースラーメンを試したことがない方にはぜひ食べていただきたいですね。
「おうちでIPPUDO」一風堂プラントベースラーメン白丸・赤丸
▼公式HPはこちら
こだわりのプラントベースラーメンを全国へ
―weeeat!編集部
更なるチャーシューの進化を楽しみにしています! 最後になりますが、今後の展望があればお聞かせ下さい。
―冨田さん
地球環境についての問題を始めとする、SDGsやプラントベースフードといった言葉は、子ども達の方がしっかりと学んでいて、知識があります。
我々世代こそプラントベースフードの重要性を学んでいかなければならないと思います。そこで、不二製油さんやカゴメさんなどと一緒にプラントベースフードを広く知ってもらう活動の場として、Plant Based Lifestyle Lab(プラントベース ライフスタイル ラボ)という団体を立ち上げました。
―weeeat!編集部
まず知ってもらうことが大事なことですよね。
―冨田さん
実はプレスリリースで販売のお知らせをした際、販売前にも関わらずお客様から「プラントベースラーメンを販売してくれてありがとう」と感謝のメールをいただいたんです。そんなことは今までになかったので驚きましたが、それだけ求められる方がいることを実感しました。「一風堂として継続していかなければならない」という使命感が湧きました。
発売後にもうれしい報告がありました。お父さんは一風堂のファンでいつも食べにいらっしゃっていたそうなのですが、奥さんとお子さんはヴィーガンで、ラーメンを家族みんなで食べに行くことができなかったそうです。しかしプラントベースラーメンの提供により、家族一緒に同じ場所でラーメンを楽しむことが出来たんです。
「美味しいラーメンをみんなで楽しむこと」。これこそが一風堂の目指すところだと。
立場や健康上の理由で動物性のラーメンを楽しめないお客様はまだまだいらっしゃいます。現在プラントベースラーメンを常設で提供しているのは「新宿ルミネエスト店」のみですが、日本だけでなく世界中で提供していきたいと思います。