2023/09/13

規格外野菜をアップサイクル! 京都発の乾燥野菜「OYAOYA」が提案する“畑の新しいご馳走”

weeeat!編集部
規格外野菜をアップサイクル! 京都発の乾燥野菜「OYAOYA」が提案する“畑の新しいご馳走”

「規格外野菜に付加価値をつけて販売したい」との思いから、2021年3月に京都発の乾燥野菜ブランド「OYAOYA」を立ち上げた株式会社Agriture。獲れたてのトマトやタマネギ、きゅうりといった規格外の野菜をアップサイクルして乾燥野菜にするという取り組みが注目を集めています。同社の代表取締役・小島怜さんに、乾燥野菜ブランドを立ち上げた経緯や製品の特長、海外市場への展開などについてお伺いしました。

起業の原点は「規格外野菜に付加価値をつけて販売したい」という思い

―weeeat!編集部
まずは乾燥野菜ブランド「OYAOYA」を立ち上げた経緯をお聞かせください。

―小島さん
大学で農業を学んでいたので普段から農家さんと触れ合う機会が多かったのですが、そこで「規格外野菜」の問題を目の当たりにしました。規格外野菜とは、形や色が悪かったり、傷がついていたりする野菜のこと。生産される野菜の30%以上を規格外野菜が占めると言われており、そのほとんどが流通されずに廃棄されています。私たち消費者からすると「もったいない」と思ってしまいますが、農家さんにとってみればもったいないからといって無料で提供しても何のメリットもありませんし、通常の野菜が売れなくなるという問題もあります。

当時、IT会社を経営していたため、規格外野菜になんらかの付加価値をつけてネットで販売すればこうした生産者と消費者の間にあるギャップを解決できるのではないかと考え、それが本事業を立ち上げるきっかけとなりました。

―weeeat!編集部
そこで、すぐに“乾燥野菜”にたどり着いたのでしょうか?

―小島さん
いえ、はじめは野菜チップスを作ろうと思っていたのですが、最初に訪ねた農家さんが乾燥野菜を作られていたんです。野菜チップスは油で揚げるため、いろいろな設備や免許も必要になります。しかし乾燥野菜は乾燥させるだけなので大がかりな設備は必要ないですし、免許も製造側のみで販売側は必要ありません。始めやすいことに加え、味も美味しい。ECサイトなどで乾燥野菜を販売している会社も多く、商品化できそうな感触がありました。

―weeeat!編集部
乾燥野菜を商品化する上で、苦労した点などがあれば教えてください。

―小島さん
乾燥野菜を10年ほど作っていた農家さんだったので、加工の技術については全く問題がなく、商品化もスムーズでした。ただ、売り方がわからないということで、ゼロからブランドを立ち上げるのは大変でした。現在は農家さんの方で野菜を乾燥していただき、適正な価格で仕入れて販売しています。OYAOYAという一つのブランドを通じて、農家さんとより良い関係を築きながら、フードロスや農業の存続にも向き合っていきたいです。

農家さん

メイン購入層は料理が趣味の50代

―weeeat!編集部
どういった層をターゲットとしているのですか?

―小島さん
パッケージのデザインや公式サイトのデザインがポップな感じなので、若い人がターゲットと思われがちですが、実際に購入されるのは50代の方が多いですね。やはり料理を趣味として楽しみ、乾燥野菜や干し野菜のことをすでに知っている人となると数は限られます。でも、妊婦さんのような気軽に買い物に行けない方や健康に気遣う方も増えてきているので、そういった方にも幅広く楽しんでいただきたいですね。

―weeeat!編集部
乾燥野菜を作る上で、こだわりがあれば教えてください。

―小島さん
乾燥野菜を作る上で大切にしているのは、できる限り「味のばらつき」を出さないこと。現在は一つの野菜につき一農家さんにお願いするような形にしています。そうなると、必然的にある程度大規模な農家さんを探すことになります。美味しい乾燥野菜を届けるために、提携する農家さんの数を増やすというよりも、農家さんとの関係性を密にすることを大切にしています。

―weeeat!編集部
農家さんを絞らないと味のばらつきが出てしまうという話はすごく興味深いですね! 乾燥野菜にすると旨みや甘みはより感じやすくなったりするのでしょうか?

―小島さん
そうですね。水分がほとんど抜けるので、本当に野菜そのものの味が感じられますね。他社の乾燥野菜を食べ比べたり、市場から仕入れた野菜を乾燥させてみたりもしたのですが、作り手によって、作り方によってすごく味が変わると感じています。実際に提携している農家さんの玉ねぎはメロンぐらい糖度が高く、あまり辛さを感じずに食べられるタマネギを使用しています。

―weeeat!編集部
野菜のうま味をダイレクトに味わえるのが乾燥野菜なんですね!香りや食感も変わるのでしょうか?

―小島さん
はい。例えば「はだかつミックス」は3種類の人参を使用しているのですが、ハーブの香りがする人参は漢方のお茶に入れても美味しいですね。

乾燥野菜

きゅうりのフルーティな甘さが人気

―weeeat!編集部
どのような乾燥野菜が人気ですか?

―小島さん
きゅうりが人気です。生のきゅうりだとみずみずしくてシャキシャキッとした食感ですが、乾燥させるとフルーティな甘さがはっきりして漬物のような食感に。一度食べると驚く食感で、リピーターが多い乾燥野菜のひとつです。

―weeeat!編集部
乾燥野菜の楽しみ方や、魅力について教えていただけますか?

―小島さん
そうですね。ホームページでも乾燥野菜を使ったレシピを公開していますが、おやつ感覚でそのまま味わったり、スープや炊き込みご飯に加えたり、サラダに加えたりといろんな使い方を楽しんでいただけると思います。また、乾燥野菜のメリットは、旬の美味しさをオールシーズン楽しめること。日持ちするので、「今年は天候の影響で玉ねぎが甘い!」という時に乾燥させると、季節を問わずに美味しい野菜を楽しむことができます。ヴィンテージウイスキーのように「何年ものの乾燥野菜」という打ち出し方も検討しているところです。生鮮野菜以外でも、野菜の美味しさを届けられる手段になっていると思います。

―weeeat!編集部
乾燥野菜は少量でも栄養価が高いので、野菜が苦手なお子さんにも良さそうですね。

―小島さん
確かに、「生の野菜は食べられないけど、この乾燥野菜は食べられる」といった声は多いですね。普段の料理に少し加えて使っていただくとお子さんでも食べやすいと思います。人参やオクラは食物繊維が豊富なので、野菜嫌いのお子さんにぴったりです。

乾燥キュウリ

海外展開、そして京野菜に特化した乾燥野菜ブランドも

―weeeat!編集部
OYAOYAの乾燥野菜は海外でも販売されているのでしょうか?

―小島さん
はい。ドイツ・ニューヨーク・香港・台湾で販売しています。ドイツでは伏見唐辛子を販売していて、ビールのおつまみとして人気です。ただ、世界には自炊する文化のない国もあるので、それぞれの国に合わせて製品を出していく必要があると思っています。国によっては、野菜チップスのようにそのまま食べられる製品にすると売れる可能性があるかもしれません。

―weeeat!編集部
海外の乾燥野菜の市場や認知度をどのようにご覧になっていますか?

―小島さん
トルコや東南アジア圏はドライマンゴーなどが一般的です。私は現在インドにいるのですが、インドだとシナモンやカルダモンなどのスパイスを乾燥させたものが一般的です。東南アジア圏では乾燥野菜を見かける機会はあまりないですが、トルコやインドなどはドライトマトをはじめとした乾燥野菜を見かけることもあります。

2023年6月に、包丁メーカーとして有名な貝印にグループインしました。貝印グループが持っているリソースを含めて、OYAOYAの乾燥野菜を海外に広げていきたいと思っています。特に京野菜に関しては海外からの関心も高く、ギフトでの販売や、日本食レストランへの卸売などを通じて、海外での認知拡大に努めていきたいです。

―weeeat!編集部
長期保存できる乾燥野菜は、災害時の防災食としても使えそうですね。最後に、OYAOYAの今後の展望について教えてください。

―小島さん
ありがとうございます。現在のラインアップに加えて、キャベツやビーツを使った乾燥野菜の販売を予定しています。さらに派生ブランドとして、京野菜に特化した乾燥野菜ブランドの展開も検討しています。京野菜では「京くれない人参」「伏見唐辛子」「万願寺とうがらし」「聖護院大根」「九条ねぎ」「壬生菜」「賀茂なす」の乾燥野菜を販売しています。他にはない形をした野菜ばかりです。例えばそれを丸ごと乾燥させたり、いろいろな切り方や乾燥をしたりして、伝統的な京野菜ならではの楽しみ方も提案していきたいと考えています。

小島さん
「OYAOYA」を立ち上げた株式会社Agritureの代表を務める小島 怜さん(右)

店舗情報・商品入手先

店舗名 OYAOYA(運営会社:株式会社Agriture)
住所 〒600-8427 京都府京都市下京区玉津島町294 
OYAOYAは公式通販サイトで購入することができます。商品やレシピなどの情報はInstagramをご覧ください。

通販サイト:https://oyaoya-kyoto.com/
Instagram:https://www.instagram.com/oyaoya_kyoto/

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