“発酵の町”金沢大野の老舗、ヤマト醬油味噌が提案する「一汁一菜に一糀」

「発酵食品の聖地」とも呼ばれる金沢市大野町で、味噌や醤油、甘酒の製造・販売を手がけるヤマト醤油味噌。創業110年を超える老舗の蔵元でありながら、体験型テーマパークの運営やチーズケーキ専門店を立ち上げるなど、現代の暮らしに寄り添った発酵食の魅力を発信し続けています。「発酵食とその文化を次代につなげていきたい」と語る同社の営業部長・山本耕平さんに、商品のこだわりや取り組みについて伺いました。
発酵の町 金沢で100年以上続く蔵元
―weeeat!編集部
ヤマト醤油味噌のある金沢は「加賀百万石」の城下町として知られています。この地域では、昔から醤油や味噌などの発酵食品が作られていたのでしょうか?
―山本さん
ヨーロッパと比べて温暖かつ湿潤な日本の気候は発酵に適しており、古くから各地域で発酵食品が作られてきました。周囲を海に囲まれた島国ならではの環境を生かして、塩漬けなどの保存・備蓄方法が発展。中国からやってきた醤(ジャン)の文化と合わさって、日本の発酵文化は独自の進化を遂げ、海外からも注目を集めています。
金沢市大野町は、江戸時代に加賀藩の命を受けて「醤油製造」を始め、特産品として地元はもとより、北海道や江戸の加賀藩邸にまで運ばれたという記録があります。以来、醤油製造は大野の産業として発展し、野田・銚子・龍野・小豆島と並ぶ「五大産地」のひとつとして数えられるようになりました。大野で作られる少し甘めの「うまくち醤油」は、加賀料理に欠かせない調味料として多くの人に愛され、食文化の発展に貢献しています。
―weeeat!編集部
そんなに古くから発酵文化が根付いているのですね。続いて、ヤマト醤油味噌について教えてください。
―山本さん
当社は1911年に創業した老舗の蔵元です。初代は船乗りとして北海道への商いを開拓し、二代目が醤油製造を始め、三代目から味噌の製造を行っています。そして、現在の四代目である私の父と叔父の兄弟は、「伝統は革新の連続」という信念のもと、発酵文化をさらに広めるために様々な事業を展開しています。
飲める玄米「玄米甘酒」
―weeeat!編集部
ヤマト醤油味噌のホームページを拝見したところ、「玄米甘酒」という商品がありました。米糀を使った「糀甘酒」はよく見ますが、それとは違うものなのでしょうか?
―山本さん
違うものです。「玄米甘酒」は、玄米と米糀のみで作ったノンアルコールの糀甘酒です。玄米を丸ごと潰しているので、クリーミーなとろみがあります。きな粉や胡麻のような香ばしい風味と自然な味わいが特長です。
―weeeat!編集部
「玄米」を使用しているのは何か理由があるのでしょうか?
―山本さん
食卓で食べられている白米は、玄米を精米して糠やもみ殻を削ぎ落としたものですね。美味しさを追求した結果、玄米が持つビタミンやミネラル、食物繊維といった栄養素が失われているのです。玄米には「食べにくい」というイメージがつきものですが、甘酒にすることで朝食や間食代わりに気軽に飲むことができます。栄養価の高い玄米を、丸ごと美味しく、気軽に食べられるというコンセプトでつくりました。
―weeeat!編集部
健康や美容のために玄米を食べたくても、通常の炊飯器で炊くとパサパサしたり、よく噛まないと消化できなかったりするため、食卓に取り入れにくいという人も多いと聞きます。でも、飲み物なら簡単で良いですね!
―山本さん
そうですね。食べにくい玄米も米麹の力でうまく発酵させることで、柔らかく、やさしい甘さが際立つようになります。白米甘酒と比べて、うま味成分のアミノ酸が豊富で、食物繊維も5〜6倍含まれています。最近、腸内環境を整える「腸活」に取り組む人も増えていますが、善玉菌のエサになる食物繊維を積極的に摂取することで、腸を効果的にメンテナンスできます。そのまま飲んでいただくのも良いですし、ヨーグルトに入れても美味しいですよ。ヨーグルトに玄米甘酒を入れ、食物繊維が含まれるシリアルやグラノーラと一緒に食べるのがおすすめです。
―weeeat!編集部
美味しそうですね! 朝食に試してみたいと思います。他にどのような商品が人気ですか?
世界の三ツ星シェフが愛用する生醤油
―山本さん
80年以上使い続けている木桶と、伝統的な製法で仕上げた生味噌「かなえ」は人気ですね。原材料には地元石川県産の有機栽培の国産大豆と米を使用しています。丸一年熟成させた長期熟成、かつ熱処理をしない生味噌だからこそ生まれるコクと、糀の芳醇な香りの良さが特長です。
―weeeat!編集部
国産の大豆と米にこだわっているのですね。
―山本さん
スーパーで売られている納豆などを見てもわかるように、大豆の95%は輸入品ですが、「かなえ」は有機栽培された国産大豆を使用しています。雑味の原因となる外皮を取り除き、手間ひまかけて安心安全で美味しい味噌を作っています。
また、厳選した国産大豆・小麦で作った日本初の生醤油「ひしほ」も人気です。火入れを行わず、諸味(もろみ)そのものの香りと美味しさを味わえる搾りたての生醤油は、金沢の寿司職人や世界の三ツ星シェフにも愛用されています。
五感で楽しむ「糀のテーマパーク」
―weeeat!編集部
工場の敷地内に「ヤマト・糀パーク」という施設があると聞きました。これはどのような施設なのでしょうか?
―山本さん
「見て触れて、五感で楽しむテーマパーク」をコンセプトに、糀や発酵食の魅力を体感できる料理教室・食堂・店舗を備えた複合施設です。糀蔵で発酵食品について学んだり、手がすべすべになる糀手湯(ハンドバス)を体験したり。ヤマトの生味噌で自分だけのオリジナル即席味噌汁を作る「みそぼーる作り体験」も人気です。
他にも金沢の旬の食材をふんだんに使用した糀料理を提供する会員制の「発酵食美人食堂®」、蔵元おすすめの醤油や味噌をはじめ、様々な調味料を味見しながらお買い求めいただける販売所「ひしほ蔵」にもぜひ足を運んでいただきたいです。
―weeeat!編集部
「食べる」「見る」「作る」が揃った施設ですね。知れば知るほど、もっと発酵について知りたくなりました。
―山本さん
ありがとうございます。「発酵食に興味はあるけど、ハードルが高い……」という人は多いものです。そんな方のために「目指せ、発酵食美人®!」をスローガンにした大人のための部活動「ヤマト・糀部」という取り組みを始めました。手軽で楽しい発酵食の料理教室を開催しています。糀料理を手軽にマスターできるオンライン教室も開催しているので、美と健康を真剣に追求する方はぜひご参加ください。
―weeeat!編集部
糀料理のレパートリーが広がりそう! 最後に、ヤマト醤油味噌の今後の展望について教えてください。
―山本さん
「一汁一菜に一糀」。
ヤマト醤油味噌では後世に伝えたい日本の食生活をそう名づけ、現代に合う形にアレンジしてご提案しています。「一汁一菜」とは、白米や玄米を主食に、具だくさんのお味噌汁と、季節の食材を使った「お菜」一品と、お漬物、という伝統的な和食のことです。お菜を味噌や塩糀や甘酒などの糀を使った発酵調味料で味付けすることで、活きた「酵素」を摂り入れることができます。金沢市の中でも発酵食文化が色濃く残る大野町を拠点に、味噌や醤油はもちろん、玄米甘酒など発酵食品の枠をさらに広げながら、日本人が何百年も続けてき発酵食品や和食を次代につなげていきたいです。
店舗情報・商品入手先
店舗名 株式会社ヤマト醤油味噌
住所 〒920-0331 石川県金沢市大野町4丁目イ170
電話番号 076-268-5289(ヤマト・糀パーク代表電話)
営業時間 10:00〜17:00(ヤマト・糀パーク 水曜、年末年始定休日)
ヤマト醤油味噌の商品は公式通販サイトより購入できます。
通販サイト:https://shop.yamato-soysauce-miso.co.jp
Instagram:https://www.instagram.com/yamato_shoyumiso/?hl=ja