2023/12/06

「食べチョク」が目指す持続可能な一次産業のカタチ ~“つなぐ”から実現できるSDGs~

weeeat!編集部
「食べチョク」が目指す持続可能な一次産業のカタチ ~“つなぐ”から実現できるSDGs~

認知度・利用率など数々のNo.1※を持つ日本最大級の産直通販サイト「食べチョク」を運営する株式会社ビビッドガーデン。生産者から直接野菜・果物・肉・魚などを購入できる仕組みが話題を呼び、2017年の開始以降ユーザー数95万人、登録生産者数9,100軒、商品数6万点を突破し、今も成長を続けるサービスです。近年は「食べチョク」の活動に賛同する企業と連携し、SDGsへの貢献や一次産業の課題解決にも取り組んでいます。今回は同社の広報・石田 恵理さんに持続可能な一次産業に向けた取り組みを伺いました。

(※)国内の産直通販サイトの中で「お客様認知度」「お客様利用率」「お客様利用意向」「Webアクセス数」「SNSフォロワー数」「生産者数」「生産者認知度」「生産者利用率」「生産者利用意向」の9つでNo.1を獲得。

“こだわり”が評価される世界を目指して

―weeeat!編集部
メディアでもよくお見掛けする「食べチョク」ですが、改めてどのようなサービスなのか教えてください。

―石田さん
「食べチョク」は消費者と生産者を直接つなぐオンライン直売所です。こだわりの生産者から野菜・果物・米・肉・魚・飲料といった食材全般と、花き類を直接購入できます。市場やスーパーを介さずに、生産者さんから直接お届けするため、収穫や水揚げから最短24時間以内の新鮮な食材が届きます。また、生産者と直接やりとりできるため、おすすめのレシピを聞いたり、生産者さんに感謝の気持ちを伝えたり。作り手と買い手が直接コミュニケーションを取れることが特徴です。

食べチョク

―weeeat!編集部
農家さんや漁師さんの「ひととなり」を直接感じられると、料理をするのが楽しくなりそうですね。コロナ禍でサービスに対する需要などは高まったのでしょうか。

―石田さん
そうですね。新型コロナウイルスの感染拡大は、私たちの暮らしに大きな変化をもたらしました。飲食店やホテルの休業が相次ぎ、これまで飲食店やホテルに食材を卸していた生産者の多くが苦境に立たされることに。消費者にとっても外食や買い物に出かけることが難しい中で、「食べる」ことで生産者を応援するキャンペーン(送料500円オフ)を実施しました。この取り組みは多くの方に賛同していただき、SNSでも話題になりました。

―weeeat!編集部
どのような生産者さんが「食べチョク」に登録されているのでしょうか。

―石田さん
こだわりを持って、栽培・飼育・漁に取り組む全国9000軒以上の生産者さんにご登録いただいています。例えば、国内に45名ほどしか生産者がいない「ピンクレディ」という酸っぱくて珍しいりんごを作っている生産者さんや、長年糖度の研究を続け、糖度70度以上の焼き芋を販売されている生産者さんなど、こだわりを持っている方ばかりです。

「ピンクレディ」を栽培する安曇野ファミリー農園 中村さん
「ピンクレディ」を栽培する安曇野ファミリー農園 中村さん

―weeeat!編集部
ビビッドガーデンでは「生産者の“こだわり”が正当に評価される世界へ」というビジョンを掲げていますが、こだわりをどのように評価しているのでしょうか。

―石田さん
例えば、私たちがスーパーで手に取る野菜の場合、生産者に残る粗利は販売価格のおおよそ30〜50%と言われています。現在の流通ルートには卸売業者・仲卸業者・小売店などが存在しており、利益を上げていくのが非常に難しい仕組みになっています。また生産者自身に価格の決定権がないため、人件費などの生産コストが引かれると生産者へ還元される利益はごくわずかです。

どれだけこだわってもそれが価格に反映されなかったり、こだわるほど赤字になってしまったり。こうした状況を変えるために、「生産者ファースト」の想いのもと「食べチョク」が生まれました。「食べチョク」では販売価格も自由に決められて、販売価格の80%が生産者の手元に残るというビジネスモデルになっています。

食べチョクビジネスモデル

困っている生産者を、消費者が直接応援できる

―weeeat!編集部
「食べチョク」というと生産者のパートナーとして、災害時などにスピード感を持って取り組んでいるという印象があります。

―石田さん
そうですね。生産者は、台風や凍霜害、大雨などの予測不能な自然環境を相手にしています。被害を受けた生産者さんが経営を続けられるよう、災害が発生したらすぐに生産者の声を聞いて、必要なサポートを行っています。

―weeeat!編集部
どのようなサポートを行っているのでしょうか。

―石田さん
りんごの生産量日本一を誇る青森県内のりんご園さんは、2022年の記録的な大雨で被害を受けました。りんごの木がほとんど冠水する中で、「食べチョク」は生産者を応援できる応援チケットを販売。多くの方に支援いただき、全額を生産者に寄付しました。生産者の皆さんからは「PCを開くたびに消費者の方からの励ましの声に涙が止まらず、勇気をいただきました」と感謝の言葉をいただきました。

―weeeat!編集部
まさに「生産者ファースト」を体現した取り組みですね。

―石田さん
日常生活において、消費者と生産者がつながる機会はなかなか持てませんよね。災害時などに生産者を助けたくても助けらなかったり、助ける方法がそもそもなかったりするため、そういった点では私たちの取り組みは一つの選択肢になっていると考えています。

また、消費者に正しい情報を伝えることも私たちの役割です。例えば、卵価格の高騰化。急な値上がりに戸惑った方も多いかと思いますが、円安や穀物価格の高騰、電気代や燃料代の高騰により、販売価格が高騰しても生産現場では経営に打撃を受けているという現状があります。生産者のリアルな現状を伝える活動も行っています。

2022年の記録的豪雨によるりんご園の被害
2022年の記録的豪雨によるりんご園の被害

「SDGs」は生産者・消費者にとっての共通言語へ

―weeeat!編集部
最近ではSDGs関連の取り組みにも力を入れているようですね。

―石田さん
はい。「SDGs」という言葉ができる前から、多くの生産者さんは環境に配慮した形で野菜・果物などを作ってきました。例えば、規格外の果物を加工しジャムにして販売したり、全く味には問題がないけれど、見た目が規格外となり市場価値がつかない商品を訳あり品として販売したり。「SDGs」という生産者・消費者にとっての共通言語ができたことで、メディアにも取り上げられるようになり、SDGsに対する消費者の関心も高まっています。生産者の取り組みやこだわりを伝えるためのひとつの切り口として、SDGsに取り組む生産者を特集サイトで紹介しています。

―weeeat!編集部
「SDGs」という言葉が生まれる前から、農家の皆さんは無駄なく環境にやさしい取り組みを続けていたんですね。生産者の取り組みをご紹介いただけますでしょうか。

―石田さん
特集サイトでは、7つの切り口で生産者の商品を集めて紹介しています。例えば、包装紙を新聞紙にしてプラスチックの使用をなくしたり、家畜のストレスや病気などの軽減を目指して快適な環境下で飼育するアニマルウェルフェアに取り組んだり、食品ロス削減や循環型農業に取り組んだり。漁獲量やサイズの都合で市場に出せない未利用魚の販売を行っている生産者もいます。

魚

―weeeat!編集部
「SDGs」という言葉を目にする機会が増えたことで、生産者の皆さんの意識に変化はあったりするのでしょうか。

―石田さん
そうですね。傷がついたような野菜や形が悪い食材でも、食べてくれる人がいるかもしれないということで「食べチョク」に出品してくれるようになったり、食材を知り尽くした生産者ならではの食材使い切りレシピを発信してくれるようになったりと、生産者自身の意識も少しずつ変わり始めているのかもしれません。

―weeeat!編集部
ここまで生産者のSDGs関連の取り組みを伺ってきましたが、「食べチョク」として展開されているような取り組みはあるのでしょうか。

―石田さん
「食べチョク」ではこれまで規格外食材や循環型農業などに取り組む生産者を紹介したり、食品ロス削減を目的に生産者とともにレシピを考案・発信するなどのサポートを行なってきました。しかし、「食べチョク」のみでは実現できることが限定されてしまうという課題もありました。そこで「食べチョク」の活動に賛同する企業と連携し、SDGsに貢献する生産者をサポートを強化する取り組みも始めています。

第一弾として「一次産業SDGsプロジェクト」を立ち上げたところ、証券・商品先物取引関連の企業に賛同いただきました。具体的には、規格外の食材を顧客向けの販促施策などに活用いただいています。直近ですと、りんごやみかんの木のオーナー権を賛同企業に購入いただき、収穫した果物を顧客向けキャンペーンのプレゼントに活用いただくという取り組みも始めています。

若木

企業がまとまった数量の注文を事前に確約することで、生産者にとっては計画的な生産が可能になり、生産現場での食品ロス削減につながります。また、プロジェクトの一環として、企業と共同し、廃棄される食材を活用した非常食の製造も行っています。

日本の知られざる名品を消費者へ届けたい

―weeeat!編集部
非常食まで! 素敵なアップサイクルですね。
ネットニュースで拝見しましたが、企業だけでなく、自治体とも連携されていますね。

―石田さん
はい。「食べチョク」では持続的な一次産業を目指し、自治体との連携を積極的に進めています。ご高齢の農家さんにとって「食べチョク」のようなECサイトに出品するのは大変なことです。ネットに不慣れな方を取り残さないために、自治体と連携して出品のサポートや梱包方法、お客様とのコミュニケーションの取り方についてアドバイスをさせていただいています。

自治体で食べチョクの活用方法を紹介する講演会を実施
自治体と連携し地域でEC出品に関する講演を実施

94歳の生産者がいらっしゃったのですが、近所に住む若い生産者やネットに得意な生産者が取りまとめて一緒に出品するといった動きも見られました。当社のスタッフが現地を訪れ、写真の撮り方のコツなどを伝えるセミナーなども開催しています。

―weeeat!編集部
最後に、「食べチョク」として注力していきたい取り組みや、今後の展望について教えてください。

―石田さん
秋に入り、スーパーなどでりんごを見かける機会が増えてきましたよね。りんごの品種といえば、フジ、トキ、紅玉などが思い浮かぶと思いますが、実は国内には2,000品種以上のりんごがあるんです。
例えば「ぐんま名月」。見た目が黄色なので酸っぱいイメージを持たれやすいのですが、甘さ、歯触り、香りのバランスがとれた美味しい品種です。「食べチョク」で特集ページを作ってお客様に紹介したところ、多くの方に好評をいただきました。

りんごに限らず、日本にはまだ知られていない魅力的な品種・食材というものがまだまだたくさんあります。情報の発信を通じて販路拡大のサポートをすることで、生産者の経営の安定化につながりますし、生産者と消費者をつなぐことで、自分が作った食材が誰かの役に立っているという意義を感じていただくこともできます。「食べチョク」としては、旬の食材や自分好みの食材との出会いを楽しめる施策を強化していきたいです。

特集ページで紹介した「秋リンゴの品種別旬チャート」
特集ページで紹介した「秋リンゴの品種別旬チャート」

―weeeat!編集部
これだけの品種のりんごを取り扱っているのも、全国の生産者とつながっている「食べチョク」ならでは。ここから自分好みの品種を探すのも楽しそうですね! SDGs関連の取り組みではいかがでしょうか。

―石田さん
SDGsに特化した取り組みというよりは、もう少し幅広い視点で考えると、様々な品種の農水産物に関する情報を発信したり、災害時などに企業と連携して生産者をサポートしたりすることも生産者の持続可能性につながります。今後も多くの企業と連携することで応援の輪を広げ、一次産業の課題解決に貢献したいと考えています。

店舗情報・商品入手先

店舗名 食べチョク(運営会社:株式会社ビビッドガーデン)
住所 〒105-0013 東京都港区浜松町1-7-3 第一ビル4F

食べチョクで取り扱っている商品は公式通販サイトで購入できます。

通販サイト:https://www.tabechoku.com/
Instagram:https://www.instagram.com/tabechoku/

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