2024/12/13

「食」の未来のために知っておきたい地球温暖化の現状|佐座マナ×影山桐子トークイベント「食から始めるサステナブルで豊かな暮らし」(前編)

weeeat!編集部
「食」の未来のために知っておきたい地球温暖化の現状|佐座マナ×影山桐子トークイベント「食から始めるサステナブルで豊かな暮らし」(前編)

私たちが生きる上で欠かせない「食」。毎日の食事が、地球環境に大きな負担をかけていることを知っていますか? 今回は、リビングデザインセンターOZONE30周年記念トークイベント「食から始めるサステナブルで豊かな暮らし」の様子をレポート。
サステナブルな社会の実現に向けて世界各地で活動している若きリーダー佐座マナさんと、世界のフードシーンをけん引する食のバイブル『ELLE gourmet(エル・グルメ)』編集長の影山桐子さんをゲストに迎え、サステナブルな「食」の未来について考えました。ファシリテーターはweeeat!編集部の相原が務めています。
地球温暖化の現状と世界の潮流とは? 暮らしの中でできるサステナブルな取り組みとは? 今日から実践できる「食」の選択について、皆さんと一緒に考えるトークセッション。
前編は、「サステナブルな社会の実現に向けた世界と日本の現状」についてお話を伺います。

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「食」の未来のために出来る、楽しく・美味しいアクションとは?|佐座マナ×影山桐子トークイベント「食から始めるサステナブルで豊かな暮らし」(後編)


■イベント情報
2024年1027日(日)
佐座マナ×『ELLE gourmet』編集長のトークイベント
「食から始めるサステナブルで豊かな暮らし」
@リビングデザインセンターOZONE

■ゲスト
佐座 マナ 一般社団法人  SWiTCH 代表理事
影山 桐子 『ELLE gourmet』編集長

■ファシリテーター
相原 健彦
東京ガスコミュニケーションズ株式会社 weeeat!編集部


サステナブルな「食」の未来を考えるにあたって

―相原
こんにちは。weeeat!編集部の相原と申します。本日は佐座さんと、影山さんのお二人をお迎えして、「食から始めるサステナブルで豊かな暮らし」というトークテーマで、皆さんと一緒にサステナブルな「食」の未来について考えていきたいと思います。よろしくお願いします。
早速ですが、お二人の自己紹介からお願いできますか?

―佐座
皆さん、こんにちは。一般社団法人SWiTCH 代表の佐座と申します。「SWiTCH」はサステナブルな社会の実現をめざす若者のプラットフォームです。そこで環境教育について発信しています。今日は皆さんに、世界で起きている環境問題を少しでも「自分ごと化」していただければうれしいです。

▼佐座マナ(一般社団法人SWiTCH 代表理事)
1995年生まれ。カナダ ブリティッシュ・コロンビア大学卒業。ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン大学院 サステナブル開発専攻 卒業。Mock COP26 グローバルコーディネーターとして140カ国の若者に呼びかけ、COP26で環境教育サミットを開催、国際的に注目を浴びる。2021年 一般社団法人SWiTCHを設立。2023年 Forbes JAPAN 30 UNDER 30に選出される。2024年 日本学術会議連携会員(特任)に就任。COP26・COP28・COP29日本政府団として参加。

―相原
佐座さんは現在、一般社団法人SWiTCHで環境教育について発信されていますが、そもそも環境問題に関心を持ち始めたきっかけのようなものはあったのでしょうか?

―佐座
はい。幼い頃から環境問題に興味を持ち、高校卒業後はカナダのブリティッシュコロンビア大学へ進学しました。「都市と自然の関係」について学ぶ中で、サステナブルな社会の実現に関する見識を深めたいという想いから、2019年にロンドン大学大学院に進学します。

2019年といえば、新型コロナウイルスが流行した年。皆さんも普段からマスクをつけたり、在宅勤務を強いられたりと、ライフスタイルが大きく変わったことと思います。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、毎年開催されていた気候変動に関する国際会議(COP)も延期されることになりました。

ですが、その間も気候変動は止まることなく、むしろそのスピードを上げています。気候変動のインパクトを受けるのは、これからを生きる若い世代や子どもたち。どうすれば若い人たちの声を国際会議に反映できるかということで、世界140か国の2000名の若者に呼びかけ、Mock COP(模擬COP)を開催しました。そこでは18個の政策を打ち出しましたが、なかでも絶対に実現しなければならないものの一つが、「気候変動教育の義務化」です。

「なぜ気候変動が起きているのか、それをストップするためにはどうすればいいのかということを学校教育の現場で教えて欲しい」というのが私たち模擬COPメンバーの願いでした。現在、気候変動教育も義務化に向けて進んでいますが、私たち若者が中心となり、世代・業界・国境を超えて、「地球一つで暮らせる未来」の実現に向けて活動しています。

―相原
佐座さん、ありがとうございます。続いて、影山さんお願いします。

―影山
皆さん、こんにちは。『ELLE gourmet』編集長の影山と申します。私は社会人になってからずっと編集者をしています。女性向けWEBマガジン『ELLE ONLINE』のファッションエディターから始まり、2017年に『Women’s Health』の編集長に就任し、2023年から『ELLE gourmet』の編集長を務めています。

また、ランニング好きが高じて、ファッション・ビューティー・メディア業界の女性ランナーによる企画集団「ランガール」を設立し、マラソン大会の運営にも携わっています。

元々『ELLE gourmet』を担当する前から料理をするのが大好きで、どちらかというと朝も夜もちゃんと作りたい派です。今日は一生活者の立場から、「食」のサステナビリティについて勉強しながら、ご家庭で実践しやすい取り組みについてお話できたらと思っています。よろしくお願いします。

▼影山桐子(『ELLE gourmet』編集長)
横浜市出身。大学卒業後、ウェブデザイナーを経て、1998年にアシェット・フィリパッキ・ジャパン(現・ハースト・デジタル・ジャパン)入社。女性向けウェブマガジン『ELLE ONLINE(エル・オンライン)』にファッションエディターとして約12年携わる。20171月『Women's Health(ウィメンズヘルス)』編集長に就任し、2021年にはEコマース『Womens Health SHOP(ウィメンズヘルス ショップ)』の立ち上げをけん引。20239月からは『ELLE gourmet』編集長に就任。ランニング好きが高じて、ファッション、ビューティー、メディア業界の女性ランナーによる企画集団「ランガール」を2010年に設立し、創設メンバーとして一般社団法人ランガールの理事も務める。

日本人と同じ水準の食生活を送るには、地球2.9個が必要

―相原
影山さん、ありがとうございます。本日は、3つのトークテーマから「食」のサステナブルについて考えていきたいと思います。1つ目のテーマが「サステナブルな社会の実現に向けた世界と日本の現状について」です。地球温暖化の現状と世界の潮流について、佐座さんからお話をお願いします。

―佐座
はい。皆さんは「食べる」ことが好きですか? もちろん、好きですよね(笑)。私も食べることが大好きで、特に鶏肉が大好物です。でも、好きな物をいつまで食べ続けられるかということについて、考えたことがある人は多くないと思います。

もし、世界中の人たちが日本人と同じ水準の生活を送ったら、地球はいくつ必要だと思いますか? 答えは、2.9個です。しかし、私たちの地球は1つしかありません。地球2.9個分のエネルギーや資源を、1つ分の地球に抑えることが私たちに課された宿題です。

では、先進国を中心にエネルギーや資源を使いすぎてしまっている現状が、どういうインパクトをもたらしているのでしょうか。

これはソロモン諸島に住んでいる私の友人のインタビュー動画です。(動画はこちらのURLから視聴できます
気候変動の影響で海面上昇が進み、島が消滅するという事態になっています。多くのエネルギーを消費してCO₂を排出している国と、気候変動で被害を受ける国は異なります。つまり、私たちの便利な生活が、実は知らないところで大きなインパクトをもたらしているのです。
この50年間で私たちの生活は便利で豊かになりましたが、地球1つで生み出せる資源の量よりも、人間が1年間で使う量の方が多いという状態が続いています。

「プラネタリー・バウンダリー」という言葉がありますが、地球には環境容量があり、その範囲内(図の緑色)でしか資源は使えません。それを超えるとオレンジ色で表示されます。
すでに危機的状況にあることがわかりますね。以前との気候の違いを肌で感じている人は多いと思いますが、最近では「地球沸騰化」という言葉があるほど、地球温暖化のスピードは速まっています。

この責任を取るのは、世界の温室効果ガス排出量の80%を排出している先進国で暮らす私たちです。日本は世界で5番目に二酸化炭素排出量の大きい国で、地球環境に大きな影響を与えています。裏を返せば、私たちの行動を変えることで、地球環境の保全に大きく貢献できることを意味しています。
2015年に採択されたパリ協定では、産業革命前と比べて、世界の平均気温の上昇を「1.5度」に抑える努力をするという国際的な温暖化対策目標が掲げられました。なぜ、1.5度になっているのかというと、地球の平均気温が2度上昇すると、深刻な影響が予想されるからです。
例えば、平均気温が1.5度上昇すると、50年に1度発生する高温は8.6倍、10年に1度発生する大雨の頻度も1.5倍になると予測されています。それが2度上昇すると、それぞれ13.9倍、1.7倍にまでなるのです。

私たちが便利な生活を追求し、これまで以上にエネルギーを消費し、好きな食べ物を食べ続けてしまったら、世界各地で洪水・熱波・干ばつなどの災害が増えていくと考えられています。でも、私も食べることが大好きなので、無理なく好きなものを食べながら、こういった災害を減らしたいです。そのためにどうすれば良いのか。皆さんと一緒に考えていきたいと思います。

―相原
インパクトのある数字ばかりで、驚きました。影山さん、率直な感想を聞かせてください。

―影山
普段生活をしているだけだと、こういうデータや現状を知る機会は多くないので、驚くとともに、他人ごとではいられないと感じました。ですが、この現状を知らなければ、どんな行動を起こせばいいのかわかりません。そういう意味でも、まずは「知る」ことが大切だと思いました。

―相原
私も全然知らなかった数字とか事実がたくさんありました。一生活者からすると、こういった情報はどこから得たらいいのか……というのも悩みどころですね。

―佐座
私たちの場合は、国際機関が発表する報告書や、省庁のサイト、JACCA(全国地球温暖化防止活動推進センター)の調査結果などを見ることが多いですね。ご家庭に近い情報ですと、『ELLE』さんのように、エシカルやサステナブル、SDGsを扱ったメディアを見ることもあります。『weeeat!』でも環境・健康・食文化の社会課題に向き合った情報発信をしているので、一般の方でも情報を得やすいと思います。

―相原
ありがとうございます! 『weeeat!』では「アクションをどう起こすか?」が大切なテーマで、プラントベースフードのレシピは、生活の中で出来るアクションの1つとして提案しています。『ELLE gourmet』でも、環境問題に関する情報を発信されていると思いますが、いかがでしょうか?

―影山
そうですね。私が働いているハースト・デジタル・ジャパンという会社にも、サステナビリティをミッションとした部署があって、常にさまざまな情報をシェアしてくれます。また、過大な環境訴求を行わない「グリーンウォッシュ」防止のための教育も受けているので、全社的に環境問題に対する関心は高いと思います。

当社では、今後ペットボトルの持ち込みが禁止されますが、こういう取り組みを行っている企業も増えています。アクションとしては小さいかもしれませんが、環境への影響を考えてペットボトルでなく缶を選ぼうとするなど、一人ひとりの意識や行動が変わっていくのではないかと期待しています。

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