2025/08/15

「おいしい」の裏にある想いとは?生産者と消費者をつなぐサステナブルブランド「imperfect」の軌跡【前編】

weeeat!編集部
「おいしい」の裏にある想いとは?生産者と消費者をつなぐサステナブルブランド「imperfect」の軌跡【前編】

「あなたの『おいしい』を、だれかの『うれしい』に。」をコンセプトに掲げ、社会的・環境的価値の高い取り組みを通じて生産されたコーヒー、カカオ、ナッツなどの商品を展開するブランド「imperfect(インパーフェクト)」。幼少期の原体験をもとに、食におけるサステナビリティの日常化を目指す創業者・佐伯美紗子さんに、ブランド立ち上げの背景やコンセプト、商品のこだわりについて伺いました。

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小さな一票を投じて、世界と社会をよくしていく。サステナビリティの日常化をめざす「imperfect」の挑戦【後編】

幼少期の衝撃と現地体験から誕生

―weeeat!編集部
本日はよろしくお願いいたします。
まず、佐伯さんがimperfectを立ち上げた背景を教えてください。

―佐伯さん
私は小学6年生のときから、父の仕事の都合で数年間アメリカで暮らしました。その間、家族でよく父が働いていたメキシコに訪れていたのですが、そこで私と同世代の子どもたちが物乞いをしている姿を目の当たりにしました。これは私にとって初めての経験で、とても大きな衝撃を受けたのを覚えています。

―weeeat!編集部
実際にそのような光景を目の当たりにされて、どんな気持ちになりましたか?

―佐伯さん
はじめは「何かしてあげた方がいいのかな」と考えました。でも、父の同僚が「恵むことが必ずしも解決にはならない」と教えてくれたんです。何かを恵んだりすると、一時的に空腹を満たすことができるかもしれない。でも、その子は明日も同じ生活を続けるだろうし、もしかしたら、大人になって自分の子どもにも同じ生活をさせるかもしれない。

そんな話を聞いて、子どもながらに「どうしたら彼らが毎日食べたいものを食べられて、教育を受けられるようになるんだろう」と考えました。そして、それを実現するには、社会の仕組みや経済の仕組みを変えなければ、根本的な解決にはならないと感じました。
この経験から、「社会や経済の仕組みを変えたい」という想いを抱くようになり、ビジネスを通じて社会課題を解決するために、大学卒業後は総合商社に入社しました。

―weeeat!編集部
幼少期の経験がimperfect設立の原点になっているんですね。

アメリカ在住時の佐伯さん(写真中央)
アメリカ在住時の佐伯さん(写真中央)

現地で知った生産者の現実と不平等な構造

―佐伯さん
そうですね。社会人になってから、コーヒーやチョコレートなどの産業に携わり、世界中の農園からコーヒー豆やカカオ豆を調達して、日本のメーカーに卸す業務に携わるようになりました。実際に現地の農園を訪れる中で、生産者の生活や労働環境が課題を抱えていることに気づきました。

また、彼らの事業活動が自然環境にも影響を与えていることを知りました。この経験を通して、幼少期に感じたことを改めて思い出し、「自分にできることは何だろう」と考えるようになりました。

もちろん、彼らの「力になりたい」という気持ちはありましたが、それだけではありません。消費者側が適正な価格で製品を購入できる一方で、生産者側は貧困や森林破壊などの不利益を被っている。このいびつな構造に違和感を感じました。この仕組みを正しい形に再構築することが、生産者の生活を守ることにつながります。さらには、消費者の暮らしも支えることができます。そんな持続可能な社会を作りたいと考えたことが、imperfectというブランドを始めたきっかけです

―weeeat!編集部
確かに、日本で生活していると、現地生産者の生活が困窮している状況について、なかなか知る機会がありません。

―佐伯さん
そうですよね。コーヒーやカカオの多くは、アフリカ・中南米などで作られています。そのため、どのように作られているのか、どのような工程を経て日本に届くのかイメージしにくいと思います。
日本では「食品ロス」が問題になっていますが、生産者がどれだけ一生懸命に作っているのかを知れば、食べものを大切にしようという気持ちが芽生えるのではないかと考えました。

消費者の「おいしい」が、生産者の「うれしい」につながるサイクル

―weeeat!編集部
このような社会課題を解決するために、imperfectを設立されたとのことですが、「imperfect」とはどのような意味があるのですか?

―佐伯さん
imperfectとは「不完全」という意味を持つ言葉で、二つの想いを込めています。
一つは、先ほど触れたような生産現場が抱える社会課題を「不完全」なこととして知ってもらいたい。もう一つは、たとえ最初の一歩は「不完全」だったとしても、自分たちにできることから取り組み、世界と社会をより良い形に変えていきたいという想いを込めています。

―weeeat!編集部
imperfectでは、「あなたの『おいしい』を、だれかの『うれしい』に。」というキャッチコピーを掲げていると思います。とても印象的なフレーズですが、どのようにして生まれたのですか?

―佐伯さん
ありがとうございます。生産者と消費者の間にあるいびつな構造を解消する起点は、「消費者」にあると信じています。消費者の行動で社会は変えられるという想いを込めて、「あなたの『おいしい』」から始まるフレーズを考えました。お客様に美味しく召し上がっていただく商品が、世界や社会、素材を生産する農家の方々のうれしいにつながる、そんなサイクルを作っていくとともに、消費者の皆さんと一緒に取り組んでいけるブランドでありたいと思っています。

imperfect

「おいしい」の先にある消費の持続可能性

―weeeat!編集部
imperfectでは、コーヒーやお菓子といった商品を扱っていますが、商品の特徴を教えてください。

―佐伯さん
私たちは生産者の労働環境、生活環境、自然環境に配慮されたナッツ・スパイス・カカオ・コーヒーを使用した商品を展開しています。実際に農園に足を運んで原材料を選び、それぞれの産地の個性・味を大切にしています。

―weeeat!編集部
人にも環境にもやさしいだけでなく、味にもこだわった商品なのですね。

―佐伯さん
そうですね。「サステナブル」を強く打ち出し過ぎるよりも、まずは「おいしそう」「ワクワクする」と感じていただき、その延長上にサステナブルな選択ができていた、という体験を届けたいと考えています。確かに生産者の生活環境、自然環境の課題にも関心を向けていただきたいのですが、社会によいから、環境によいからあまり好きではないけど買おうと思っていただいたとしても、それ自体がサステナブルな選択にはならないと思うのです。消費自体を持続可能にするには、「おいしい」が先になくてはなりません。

imperfectのチョコレート

おいしくサステナブルをもっと身近に

―weeeat!編集部
まさに「あなたの『おいしい』」から始まるわけですよね。
オープンからこれまでの取り組みについて教えてください。

―佐伯さん
imperfectは、東京・表参道の旧同潤会アパートの1階に店舗を構えるところからスタートしました。お客様と直接会話をしながら、ブランドの世界観を体験していただける場所を目指しました。実際に店舗をオープンすると、多くの方にご来店いただき、私たちの想いを直接お伝えすることができました。

その後、全国のお客様から「商品を購入したい」というご要望をいただき、オンラインでの販売も始めました。しかし、実店舗やオンラインストアは、どちらも「お客様をお迎えする」スタイルです。サステナブルな消費を広げていくには、私たちからお客様のもとへ一歩踏み出すことが大切だと思いました。そこで、小売向けの商品開発に着手しました。例えば、コンビニやスーパーでの商品展開や、コーヒーのサブスクリプション・サービスがあります。

―weeeat!編集部
コンビニでも購入できるのですね!

―佐伯さん
コンビニエンスストアの数は国内で約5万7,000店舗あると言われており、消費者の暮らしに欠かせないものとなっています。ふらっと立ち寄ったとき、なんとなく手に取った商品が実はサステナブルな商品だった——そんな気づきが広がっていくことを目指しています。

―weeeat!編集部
確かに、コンビニにそういった商品があれば、気軽にサステナブルな選択を取り入れるきっかけになりますね。

―佐伯さん
そうですね。サステナブルな商品に興味はあっても、「それをどこで買ったらいいのかわからない」という方は多いんです。その意味でもコンビニで展開できたのは大きいですね。ただ、私たちが商品に込めた想いや、食と農を取り巻く社会課題を、お客様に知っていただくためにはより密なコミュニケーションを重ねる必要があります。そこで始めたのがサブスクリプション・サービスです。

imperfectのココア

ストーリーとこだわりを届けるコーヒーのサブスク

―weeeat!編集部
どんなサービスなのでしょうか?

―佐伯さん
これは、コーヒー豆の栽培から焙煎までこだわって作ったコーヒーを月替わりでご自宅にお届けするサービスです。コーヒーと一緒にメッセージカードを同封して、農園の話やコーヒーにまつわる豆知識をお伝えしています。メッセージを読んでいただくことで、生産者の人となりや農園が抱える課題に対する理解も深まっていきます。

―weeeat!編集部
継続的なコミュニケーションが生まれますね。

―佐伯さん
そうなんです。お客様からも「とても素敵な取り組みですね」といったお声をいただきます。お客様とコミュニケーションがより深まっていくのを実感して、とてもうれしいです。

imperfectのコーヒー

―weeeat!編集部
どんな方が購入されていれているのでしょうか?

―佐伯さん
最初は「サステナブルだから」というよりも、「コーヒーが好き」「美味しそうだから」という理由で購入される方が多いですね。徐々に、サステナビリティに興味を持って購入を継続くださっています。また、ギフトとして購入される方もたくさんいらっしゃいます。誰かにプレゼントをあげるのであれば、想いが込められた物を贈りたい、何かプラスアルファの物を贈りたいという方が多いのではないかと想像しています。

―weeeat!編集部
確かに、ギフト選びでは「ストーリー性」や「こだわり」を重視する方が増えている気がします。私も今度友人に贈るギフトで使いたいです。

―佐伯さん
ありがとうございます。imperfectは、ギフトやご自宅用だけでなく、さまざまなシーンでご利用いただけるようにしたいと考えています。例えば最近は、お客様の生活動線により近づくため、企業向けのオフィスコーヒーサービスにも力を入れています。

近年、コミュニケーション促進や企業へのエンゲージメント向上を目的として、社内にカフェスペースを設置する企業も増えていますが、そこにサステナブルなコーヒー豆をお届けしています。話のネタとしてサステナビリティが話題に上がったらうれしいですし、皆さんのコミュニケーションの中心にimperfectというブランドがあったら幸せですね。

―weeeat!編集部
コーヒーを囲むと不思議と会話が生まれますよね。imperfectのコーヒーがコミュニケーションのきっかけになっていて、とても素敵ですね。


今回は、ブランドの立ち上げの背景やコンセプト、商品のこだわりについてお話を伺いました。次回は、imperfectの社会課題解決プロジェクトを中心にお話を伺います。

商品情報

商品は下記通販サイトで購入できます。

通販サイト:https://imperfect-onlinestore.com/shop
Instagram:https://www.instagram.com/imperfect_store_japan/

weeeat!編集部
weeeat!編集部は、私たちの大切な「食」を中心に、人と地球にやさしい情報を発信していきます。 “地球にやさしい取り組み”を共感・実践する仲間とともに、サステナブルな社会と文化を目指します。

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