小さな一票を投じて、世界と社会をよくしていく。サステナビリティの日常化をめざす「imperfect」の挑戦【後編】

食におけるサステナビリティの日常化を目指し、社会的・環境的価値の高い取り組みを通じて生産されたコーヒー、カカオ、ナッツなどの商品を展開するブランド「imperfect(インパーフェクト)」。前回は、創業者・佐伯美紗子さんの原体験やブランドに込めた想いを伺いました。今回は、私たち消費者のアクションが社会課題の解決にどのようにつながっていくのか、その仕組みとimperfectの具体的な取り組みについて迫ります。私たちが投じる「一票」には、社会と世界を変える力がありました。
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「おいしい」の裏にある想いとは?生産者と消費者をつなぐサステナブルブランド「imperfect」の軌跡【前編】
―weeeat!編集部
続いて、impefectの取り組みについてお話をお伺いします。まずは、世界と社会をよくしていくプロジェクト「Do well by doing good.」という活動について教えてください。
―佐伯さん
売り上げの一部を還元して、皆さんの投票によって選ばれた社会課題解決プロジェクトを実施する取り組みです。
具体的には、商品を購入いただいたお客様に投票チップを一枚お渡しして、3つのプロジェクト候補の中から応援したいものに一票を投じていただきます。一年間で最も票数が多かったプロジェクトは、お客様からお預かりした売上の一部を活用して実行に移します。
―weeeat!編集部
素敵な取り組みですね! どうして「投票」という制度をとったのでしょうか?
―佐伯さん
投票という行為なら簡単にできて、かつ関心を持つきっかけになるのでは、と思ったのがはじまりです。
ブランド立ち上げのとき、「どうすれば社会課題を自分ごととして感じてもらえるか」というのをとても考えました。店内にパネルを展示してアピールするという案も出ましたが、読み流されて終わってしまう懸念もありました。だからといって、お客さまに「手間」をかけると行動に移しにくい。そこで思いついたのが「投票」です。

―weeeat!編集部
確かに、「投票」なら誰でも気軽にできますね!
―佐伯さん
そうなんです。しかも、投票ボックスは透明になっているので、他の方がどのプロジェクトに関心があるかも見ることができます。
真剣にパネルを読みながら、どのプロジェクトに票を入れるか悩まれているお客様の様子を見ていると、投票というアクションが、自分も参加しているという感覚を生むことを実感しました。予想以上にしっかり考えてくださっていて、私たちもすごくうれしかったですね。
―weeeat!編集部
投票のチップを見ましたが、不思議な形をしていますね。
―佐伯さん
はい。imperfectのロゴマークを見ていただくと、右下が欠けたデザインになっているのがわかると思います。実は投票チップの形がその欠けた部分に合うように作っているんです。imperfectでの投票もそうですが、身近なところからできることに取り組み、その欠けた部分を一緒に埋めて、世界と社会をより良い姿にしていこうというメッセージをモチーフにしています。
―weeeat!編集部
“選ぶ”という小さなアクションが、大きな変化の始まりになる。そんな実感を持てる取り組みですね。
―佐伯さん
その通りです。今はリアル店舗の機能をオンライン店舗に移行させたので、店舗自体はありませんが、コンビニ等で販売している商品裏面のQRコードから投票できるようにしています。オンラインで購入した商品からも投票できますよ。
プロジェクトは生産者が自走するための「きっかけ」
―weeeat!編集部
投票の対象となるプロジェクトはどのように選ばれていますか?
―佐伯さん
3つのテーマ「環境」「教育」「平等」に基づいてプロジェクトを設定しています。プロジェクト候補を決めるにあたっては、生産者が抱える課題にアプローチできているか、また生産者が自発的に継続できる仕組みになっているか、という指針を設けています。もちろん、私たちが何十年も彼らをサポートできれば、それはすごく良いことですが、必ずしもそうならないケースもありますし、「サポートされる」「サポートしてくれる人がいる」ことが前提になったプロジェクトは持続可能ではありません。プロジェクトは、生産者が自走するための「きっかけ」に過ぎません。生産者の皆さんへのヒアリングを重ねて、「本当に必要とされていることは何か」を丁寧に探っています。
例えば、自然環境を守るために森林破壊を防ぐというプロジェクトでも、「森林破壊をやめて」と言うだけでは、ただの一方的な押し付けになってしまいます。収穫量を増やせる技術を提供するなど、生産者の方の経済的成長と自然環境の保全が両立する形を考え、サポートしながら実現を目指していくことを心がけています。
プロジェクトの成果は動画でシェア
―weeeat!編集部
幼少期の体験がプロジェクトに生かされているんですね。ちなみに、これまでにどんなプロジェクトを実施されましたか?
―佐伯さん
それぞれのテーマのプロジェクトは毎年変わりますが、初年度はコートジボワールのカカオの森を守る植林活動が選ばれ、その後ブラジルのコーヒー農園で女性の活躍のサポートをするプロジェクトも実施しました。現在シーズン7を迎えて、2026年3月31日が集計日となるプロジェクトの投票期間中です。
―weeeat!編集部
プロジェクトが実施された後の反響はいかがでしたか?
―佐伯さん
プロジェクトの様子はサイトに掲載している動画からご覧いただくことができます。動画を通じて、自分自身の投じた一票が、こういう結果に結びついているというのがわかるので、アクションを起こして良かったと感じる方が多いと思います。コーヒーもそうですし、カカオもそうですけれど、「生産者が抱えている課題を知って驚いた」という方もいますし、「好きなチョコレートを買って投票しただけなのに、だれかの喜びにつながるなら、こんなにうれしいことはない」という方もいて、とてもうれしいです。
―weeeat!編集部
動画で生産者の声や現場の変化を知ることで、プロジェクトへの共感や関心がより深まりますね。これからもさまざまな取り組みを知るのが楽しみです。
1kg単位で実現するチョコレートの普及
―weeeat!編集部
他の取り組みについても、教えてください。
―佐伯さん
私たちが商品に使っている、サステナビリティに配慮した製菓原料(チョコレート)を、街のカフェやパティスリー、ショコラトリーなどに販売しています。小規模な洋菓子屋さん・ケーキ屋さんの多くは、環境に配慮された製菓原料を仕入れようと思っても、どこから買っていいかわからない、そもそも大きなロットでしか買えないという課題を抱えている方も多くいらっしゃいます。サステナビリティ活動に参加したいという皆さんの声に応えるために、1kg単位から購入いただける仕組みを整えました。
―weeeat!編集部
小さなお店にとってとてもありがたい仕組みですね。サステナブルな原料を使いたいというお店の想いが、より実現しやすくなると感じました。
―佐伯さん
ありがとうございます。カフェやパティスリーは、日本全国どこにでもあるものです。特に、ケーキは人々を笑顔にする幸せの象徴でもあるので、そういった場所にサステナビリティが溶け込むことで、自然とサステナビリティに関心を持つきっかけにもなります。身近なカフェやパティスリーから、社会全体が少しずつ良い形に変わっていくといいなと思っています。
「食」におけるサステナビリティの日常化を目指して
―weeeat!編集部
ありがとうございます。最後に、サステナビリティへの取り組みを通じて、imperfectが目指す姿について教えてください。
―佐伯さん
2019年に会社を設立して以来、サステナビリティに配慮した商品をもっと身近に、より多くの方に届けたいという想いからさまざまな商品・サービスを展開してきました。私たちの目指している社会・世界について共感してくださるお客様も増え、本当にありがたい限りです。
その一方で、世界の食と農を取り巻く課題は山積みです。近年、人々の間でサステナビリティへの関心は高まっていますが、いつか、私たちのようなサステナビリティを訴えるブランドが当たり前になり、世の中から必要とされなくなる社会の実現を目指したいと考えています。
これは、すごく大きな話ですし、時間もかかることだとは思いますが、たとえ不完全でも、まずは自分たちにできることから取り組み、世界と社会を少しでもよくしていきたい。自社の取り組みだけでなく、企業さまとのパートナーシップも含めて、本当にできることから取り組み、少しでもサステナブルな商品に対する購買行動を変え、社会の仕組みを変えていけたらと思います。
―weeeat!編集部
貴重なお話をありがとうございました。世界の食と農を取り巻く社会課題の解決を目指す「Do well by doing good.(いいことをして、世界と社会をよくしていこう)」活動が、社会全体に広がっていくのを楽しみにしています。
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