2024/08/21

那須の人気スイーツ「バターのいとこ」がみんなを幸せにする理由【前編】 ~酪農王国の未利用食に新たな価値を~

weeeat!編集部
那須の人気スイーツ「バターのいとこ」がみんなを幸せにする理由【前編】 ~酪農王国の未利用食に新たな価値を~

生産や食品の製造過程で、価値が見出されずに廃棄されたり、安価に販売されたりする「未利用食」。そんな未利用食に価値を見出し、作り手も、買い手も、働き手も笑顔にする“三方良し”な商品づくりを行うのが、株式会社GOOD NEWS(グッド ニュース)です。牛乳からバターを作る際、大量に出るスキムミルクを使って開発した栃木県・那須町生まれの新銘菓「バターのいとこ」は連日完売するなど、多くの人に愛されています。今回は、2022年に那須に誕生した「森との共生」がキーワードの商業施設「GOOD NEWS」を訪れ、会社のビジョンとバターのいとこ誕生秘話について、広報・上田さんにお話を伺いました。


「農業」「福祉」「観光」の社会課題をデザインで解決

―weeeat!編集部

はじめに、株式会社GOOD NEWSのご紹介をお願いします。

―上田さん

株式会社GOOD NEWSは、「農(農業)・福(福祉)・観(観光)」における社会(地域)課題をデザインによって解決することを目的に、商品の企画から開発・製造・販売までを一貫して手がける会社です。

例えば食の問題でいうと、さまざまな理由から価値が見出されなかったり、廃棄されてしまったりする食材を「未利用食」と呼びます。こうした未利用食にデザインやアイデアといった新たな付加価値を持たせることで、新しい商品へと循環させ、契約する生産者さんと年間を通して安定した出荷ができる仕組みを構築し、地域の生産者さんを支援する取り組みを行っています。

―weeeat!編集部

地域の生産者さんというと、栃木県・那須町周辺の方が多いのでしょうか?

―上田さん

そうですね。社名の「GOOD NEWS」は日本語で「良い知らせ」を意味しますが、それに加えて、NEWSNorth(北)、East(東)、West(西)、South(南)の頭文字でもあります。さまざまな土地から集う人、あらゆる背景を持った人たちが食を通じてつながり、みんなが笑顔になれる場所を作りたいという願いを込めています。栃木県・那須町から生まれる幸せの循環を日本各地、そしてさらに世界へと広げるとともに、全国の生産者さんとつながり、その地域に特化した循環を生み出すことも大切にしています。

―weeeat!編集部

那須から世界へ輪を広げていく取り組みですね。素敵です!
「福祉」の観点では、どのような取り組みを行っているのでしょうか?

―上田さん

「バターのいとこ」の製造工房は、就労支援施設としての役割も担っています。何かしらの理由により働くことが困難になった方が働くには、周囲の理解や支援が必要です。しかし、栃木県にはそんな方々が働ける施設は多くありません。そこで当施設では、障がいのある方たちに製造作業の一部を担当していただくことで、これらの課題を解決しています。これまでに、2名の方が就労支援を経て正社員に移行しています。

また、地域では高齢化が進み、若手人材の確保が問題となっています。特に、那須においては、高齢化率40%とより深刻なんです。そこで、1分単位でのタイムカード制度を導入することで、小さなお子様がいて時間に制限がある方でも安心して働ける仕組みを構築しています。現在では300人くらいの方が働いています。

―weeeat!編集部

「職場のおすすめ度合い調査」のスコアも高いとサイトで拝見しました。
最後に「観光」の観点の取り組みを教えて下さい。

―上田さん

「観光」の観点では、地域の資源を活用したまちづくりを推進しており、2022年にGOOD NEWSをオープンしました。このまちは、全国から地球にやさしい取り組みをしているお店が集まる「GOOD NEWS NEIGHBORS」エリア、那須ならではの酪農を発信する「GOOD NEWS DAIRY」エリアの2つで構成されています。

観光地として多くの方が訪れる那須において、お客様に喜んでいただくとともに、持続可能なまちづくりを行い、地域が抱えている人口減少や経済力の低下といった問題を解決することを目標としています。

酪農家たちの愛情の詰まったスキムミルクに価値を

―weeeat!編集部

ここからは各分野の具体的な取り組みについてお伺いします。まず「農業分野」における取り組みとして「バターのいとこ」は外せないと思いますが、各店舗で連日行列・完売となっているそうですね。どのような経緯で開発された商品なのでしょうか?

―上田さん

ありがとうございます。「バターのいとこ」は、酪農王国でもある栃木県・那須町で放牧酪農を営む「森林ノ牧場」との取り組みから生まれたお菓子です。「森林ノ牧場」は、牛を飼育しながら森林を持続可能な形で管理したストレスの少ない牧場です。このおいしい牛乳をもとに、良質なクラフトバターを作りたいという相談を受けたのが、開発のきっかけです。

―weeeat!編集部

クラフトバターづくりからはじまったんですね。

―上田さん

はい。ただ、原料となる牛乳からバターとして採れるのはわずか4%なんです。残りの約90%は無脂肪乳(スキムミルク)で、脱脂粉乳として安価で取引されているのが現状です。そこで、酪農家たちの愛情の詰まったスキムミルクを活用して、地元那須の銘菓になるようなお菓子を作ることができないかと考え、「バターのいとこ」が生まれました。

―weeeat!編集部

スキムミルクも、正しい価値で生産者さんに還元したいという想いが、新商品誕生につながったのですね!

―上田さん

そうですね。「バターのいとこ」を作ることで、酪農家の皆さんも安定して牛乳を生産し、クラフトバターづくりにも取り組めます。さらには、私たちがお菓子を作ることで那須の観光を盛り上げ、地域の雇用も創出することができます。作り手、買い手、働き手すべてのひとが笑顔になれる、“三方良しの商品を目指しました。

―weeeat!編集部

「バターのいとこ」のほかにも、「ブラウンチーズブラザー」がありますが、こちらも生産者さんが抱える課題を解決するために生まれた商品なのでしょうか?

―上田さん

はい。「ブラウンチーズブラザー」は、チーズやヨーグルトを作る際に廃棄されてしまうホエイ(上澄み液)を利活用したお菓子です。上澄み液とはいっても、ホエイも元はチーズと同じ牛乳です。このホエイを煮詰めてできたブラウンチーズをキャラメルと合わせて厚みのあるクッキーでサンドしました。

―weeeat!編集部

酪農王国でもある那須には、これまでも牛乳や乳製品を使ったお菓子もあったと思います。参入するにあたって、何かハードルはありましたか?

―上田さん

そうですね。ハードルというわけではありませんが、商品づくりの背景にある「ストーリー」は大切にしました。美味しい・安全・安心なお菓子を提供することはもちろん大切ですが、お土産としてたくさんの方に食べていただくことで、酪農家たちが作ったバターで世の中の食卓が豊かになり、そして地域には雇用が生まれ、地域活性化にもつながっていく……ここまで循環を意識したお菓子というのは、そう多くないと思います。皆さんには、「食べる」ことで生産者のものづくりや地域の活性化に貢献いただけたらと思います。

weeeat!編集部
weeeat!編集部は、私たちの大切な「食」を中心に、人と地球にやさしい情報を発信していきます。 “地球にやさしい取り組み”を共感・実践する仲間とともに、サステナブルな社会と文化を目指します。

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