2024/09/30

無印良品の開発担当に聞く!#1 ~食文化へのリスペクトが生んだ人気商品「バターチキンカレー」の開発秘話~

weeeat!編集部
無印良品の開発担当に聞く!#1 ~食文化へのリスペクトが生んだ人気商品「バターチキンカレー」の開発秘話~

国内に597店舗、海外に654店舗、世界で合計1,251店舗(2023年8月末時点)を展開する無印良品。「これがいい」ではなく「これでいい」を目指すものづくりにはファンが多く、私たち編集部も大好きなブランドです。
そんな無印良品の食品の中でも、一番の人気を誇るのがレトルトカレー。そのラインナップは、なんと約50種類!これだけのカレーを開発し、商品化してきた理由って何なのだろう……。居ても立っても居られなくなり、開発担当の方に会いに行ってきました!
今回は株式会社良品計画食品部の中村功二さんと日向桃子さんに、無印良品のものづくりへの想いや、創業当時から続くサステナブルな取り組みの歴史について伺います。そこには、今まであまり語られてこなかった商品開発の秘話が――。全3回の連載で余すところなくお伝えします!
第1回目は、レトルトカレーを販売するようになった経緯や、開発の舞台裏、商品に込めた想いについて伺いました。

▼この連載の他の記事はこちらから

無印良品の開発担当に聞く!#2 ~「自分マーケティング」から生まれた辛くないグリーンカレー&ジビエカレー~

無印良品の開発担当に聞く!#3 ~隠れた人気商品「素材を生かしたアイス ジャージー牛乳」に込めた生産者への想い~


weeeat!編集部
今日はよろしくお願いします! 私自身、無印良品が大好きで、今日の服も上下無印でキメてきました(笑)。レトルトのカレーやパスタソースにもいつもお世話になっています。

―中村さん・日向さん
ありがとうございます(笑)。

手作りカレーキットから始まり約50種類まで拡大

weeeat!編集部
本日は、無印良品の食品の中で一番人気のレトルトカレーシリーズ、そして知る人ぞ知る人気商品「素材を生かしたアイス ジャージー牛乳」についてお話しを伺います。

まずはカレーの方から始めますね。無印良品でカレーを作るようになって長いのでしょうか?

―日向さん
長いですね。無印良品のカレーは「手作りカレーキット グリーン」から始まりました。お好みの具材を加えるだけで、簡単にグリーンカレーを作れる手軽さがヒットし、20年以上のロングセラー商品となっています。近年は核家族化や食生活の多様化により、手作りカレーキットのラインアップは以前よりも少なくなっていますが、今でも定番のグリーンカレー、バターチキンカレーは人気がありますね。その流れからカレーの商品が定番化し、レトルトも販売するようになりました。

weeeat!編集部
手作りカレーキットから始まったんですね。レトルトのカレーはどのように人気が広がったんですか?

―日向さん
キッカケの一つにメディアがあります。各ジャンルのカレーナンバーワンを決めるという番組では、無印良品のグリーンカレーが1位を獲得したんです。そうやって味が評価されるようになり、人気が広がっていきました。そしてラインアップが増えていき、今や約50種類まで拡大しています。

進化を続けて6代目!人気商品バターチキンカレー

weeeat!編集部
グリーンカレー、美味しいですよね。お店に負けない美味しさが自宅で味わえるのがうれしいです。もう一つの看板商品、バターチキンカレーも大好きです!

―中村さん
ありがとうございます。バターチキンカレーは無印良品のベストセラー商品の一つで、2009年の発売から多くのファンの方に支えられ、2023年には年間約550万食を売り上げました。今年リニューアルをした6代目となる「素材を生かしたカレー バターチキン」の発売に先立って、「無印良品バターチキンカレー15周年祭」を4月から5月にかけて開催し、期間限定で初代から4代目を復刻しました。歴代全6種を発売したところ、多くの反響がありましたね。
(※復刻版は数量限定となり順次なくなり次第終了となります)

weeeat!編集部
なんと、6代も! 歴代のバターチキンカレーを食べ比べしてみるのも楽しそうですね。

―中村さん
はい。初代は定期的に復刻をかけているのですが、発売10周年の年に初代を発売して食べ比べが出来たら面白いのではないか、というアイデアが出てきました。15周年では全部食べられたら面白いかも、と全種類を限定で復刻発売することにしたところ、意外にもバターオイルを入れた深いコクが特徴の4代目が一番人気で、私たちも驚きましたね。

weeeat!編集部
今まで、どれくらいのペースでリニューアルを重ねてきたんですか?

―日向さん
2009年初代、20122代目、20143代目、20164代目、20195代目、20246代目と、原料やスパイスを変えながらリニューアルを行っています。

weeeat!編集部
めちゃくちゃ変わっていますね! その中でもガラッと変わったタイミングってあったんですか?

6代目バターチキン

世界で学ぶ本場の味!1日10件の店巡り

―日向さん
初代と2代目以降では作り方が大きく変わりました。初代はインドのバターチキンカレーをお手本に日本で開発したのですが、2代目からはインドに出向いて作るようになったんです。現地のレストランや家庭での作り方を学び、開発に生かしています。

weeeat!編集部
すごい! 実際に現地に行って本場の味を習得しているのですね。

―日向さん
各国・各地域に赴いて開発するという姿勢は、無印良品の企業風土かもしれません。例えば、衣料品の開発においては素材を生産する現地に行くことが当たり前にされてきました。それと同じように、我々も現地を見に行くようになりました。
多い時は1年に2回、インドやタイに出向いて本場のカレー文化を学んでいます。

weeeat!編集部
1日何食もカレーばかり食べるんですか?

―日向さん
そうですね。訪れる国や地域によっては、110件ほどお店を回ることもあります。現地の食事や食習慣を知るために、レストランだけでなくカフェや雑貨屋さんなども巡るため、朝・昼・夕・夕食という日も珍しくありません(笑)。

どんな材料を使っているのか、味付けのポイントはどこにあるのか、料理を味わいながらリサーチをしています。出張中は食べる量がどうしても多くなるので、必ず胃薬を持っていきます(笑)

weeeat!編集部
ハードだ! そんな出張を通して得られた感動の一つひとつを商品開発に込めているのですね! では、現地でのリサーチを経て商品が出来るまでにどれくらいの期間が掛かるのでしょうか?

タイ出張時に食べたカレー

6代目バターチキンカレーは何が変わった?

―日向さん
ゼロベースで商品開発するのか、それとも既存の商品をリニューアルするのかによっても違います。カレーの場合はある程度ベースがあるので、リニューアルのポイントを探しにいくことがメインの目的です。そのポイントをもとに、メーカーさんと協力しながら試作品を作ります。

「これだ!」「この味!」と一発でOKを出す商品もありますが、6代目の「素材を生かしたカレー バターチキン」は企画から材料調達まで含めると丸3年は掛かっていますね。

weeeat!編集部
3年も! 開発する上で苦労したことがあれば教えてください。

―日向さん
そうですね。現地ではバターチキンカレーに玉ねぎを入れないのですが、玉ねぎを入れずに作ろうとすると味の厚みが失われてしまって。試作品を開発会議に出しては作り直しを行い、やっと今の味にたどり着きました。

weeeat!編集部
そんなご苦労が。6代目ではどんな進化をしているんですか?

―日向さん
6代目はスモーキーで香り高いビックカルダモンを加えているのが特徴です。ビックカルダモンはインドのバターチキンカレーでよく使われているスパイスですが、日本では見かけることが少ないです。このスパイスを使用したことで、香りが高く、トマトのほどよい酸味と旨みが引き立つ味わいに仕上がりました。また、カシューナッツペーストも増量することで、まろやかでコク深い味わいになっています。

「本場のものをそのまま届けたい」

weeeat!編集部
商品開発する上で、大切にしていることはありますか?

―日向さん
食品においては「世界の食文化に学ぶ」ことをテーマに、現地の気候や空気、食習慣も含めて、お客様に届けたいという想いがあります。例えば、タイで一番辛いと言われているレッドカレー。現地ではそもそも辛くないとレッドカレーと認められないため、現地にならって赤唐辛子の辛さを加えています。

もちろん、現地でしかとれない食材もありますし、その気候だからこそ美味しい料理もあるため、辛さや味の調整は必要ですが、できる限り本場のものをそのまま届けたいという想いがありますね。

―中村さん
レッドカレーはかなり辛いので、カレーの辛さを表す唐辛子マークがマックスの5を超えて6になっているんです。欄外にはみ出ています(笑)。

ただ、そのままの味では驚かれることもあります。カルボナーラを例に挙げると、現地ではショートパスタと一緒に、お酒のおつまみのような感覚で食べる料理なので、味が濃いものなんです。それを再現したので、日本の一般的なカルボナーラとはあえて少し違う商品にしました。

―日向さん
商品の名前も、現地の呼び方をそのまま使うことが多いです。例えば、「素材を生かしたカレー プラウンマサラ(海老のクリーミーカレー)」という商品があります。別に「海老のクリーミーカレー」だけで良いですよね(笑)。でも、このカレーは「プラウンマサラ」なんです。呼び名も含めて、現地のまま届けたいという想いがあります。

weeeat!編集部
現地の文化へのリスペクトを感じますね!
こうやって、日本にいながら無印良品の商品を通じて、様々な世界の料理と出会えるのは素敵なことだと思います!

―日向さん・中村さん
ありがとうございます。

次回は、無印良品の商品開発で大切にされる「自分マーケティング」や、その価値観をもとに作られた商品についてお話しを伺います。

無印良品の開発担当に聞く!#2 ~「自分マーケティング」から生まれた辛くないグリーンカレー&ジビエカレー~

中村功二さん
株式会社良品計画食品部 コミュニケーション・スペース開発担当部⾧
同社入社後、食品マーチャンダイジングの責任者、外食部門の全体マネジメントを担当。2024年2月から現職。

日向桃子さん
株式会社良品計画食品部 外食商品開発担当課長
同社入社後、外食店舗勤務、外食開発担当を経て食品MDとして調味加工、冷凍飲料を担当。2024年8月から現職。

企業情報

企業名:株式会社良品計画

無印良品の商品は店舗または公式通販サイトにて購入できます。

公式通販サイト:https://www.muji.com/jp/ja/store

Instagram:https://www.instagram.com/muji_global/

weeeat!編集部
weeeat!編集部は、私たちの大切な「食」を中心に、人と地球にやさしい情報を発信していきます。 “地球にやさしい取り組み”を共感・実践する仲間とともに、サステナブルな社会と文化を目指します。

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