無印良品の開発担当に聞く!#2 ~「自分マーケティング」から生まれた辛くないグリーンカレー&ジビエカレー~
国内に597店舗、海外に654店舗、世界で合計1,251店舗(2023年8月末時点)を展開する無印良品。「これがいい」ではなく「これでいい」を目指すものづくりにはファンが多く、私たち編集部も大好きなブランドです。
そんな無印良品の食品の中でも、一番の人気を誇るのがレトルトカレー。そのラインナップは、なんと約50種類!これだけのカレーを開発し、商品化してきた理由って何なのだろう……。居ても立っても居られなくなり、開発担当の方に会いに行ってきました!
今回は、株式会社良品計画食品部の中村功二さんと日向桃子さんに無印良品のものづくりへの想いや、創業当時から続くサステナブルな取り組みの歴史について伺いました。そこには、今まであまり語られてこなかった商品開発の秘話が――。全3回の連載で余すところなくお伝えします!
第2回は、無印良品のものづくりで大切にされる「自分マーケティング」、そこから生まれた「辛くないシリーズ」やジビエを使った商品の開発秘話、創業当初から続けてきたサステナブルな取り組みについて伺いました。
▼この連載の他の記事はこちらから
無印良品の開発担当に聞く!#1 ~食文化へのリスペクトが生んだ人気商品「バターチキンカレー」の開発秘話~
無印良品の開発担当に聞く!#3 ~隠れた人気商品「素材を生かしたアイス ジャージー牛乳」に込めた生産者への想い~
無印良品が大切にする「自分マーケティング」
―weeeat!編集部
ここまでお話をお伺いしていると、普通の食品メーカーと随分違うように感じました。新商品の開発やリニューアルの際、味の方向性は誰がどのように判断していくのでしょうか?
―中村さん
最終的にはMD(マーチャンダイザー)の意志が問われます。「売れるかどうか」ではないんです。「こういう背景があって、こういう価値を届けたい」という想いが、無印良品の商品開発においては何より重要です。これを社内では「自分マーケティング」と呼んでいます。
―weeeat!編集部
自分マーケティング! 自分の心に聞けということですね。
―中村さん
そうです。一消費者としての自分がどう思うのか。どうしたらより良い商品になるのか。自分自身に問うことを無印良品では大切にしています。
―weeeat!編集部
素敵です! 無印良品の商品には一つひとつに担当者の強い想いが込められているのか……。例えば、レトルトカレーの「辛くないシリーズ」もそのようにして誕生した商品なんでしょうか?
「あったらいいな」から生まれた「辛くないシリーズ」
―日向さん
そうですね。実は私、辛いのが苦手なんですよ。
―weeeat!編集部
あれだけカレーを開発しているのに(笑)。
―日向さん
なので、辛くない商品があった方が良いとは思っていました。
こちらの商品は、子ども用のカレーを作ろうという企画からスタートしています。社内にいるお父さん・お母さん社員にインタビューしたところ、お子様が子ども用のカレーを食べる期間は意外と短かった。すぐに大人と同じようなカレーを食べるようになる、ということが分かったんです。
他にも「グリーンカレーは好きだけど、子どもと一緒に食べられない」「辛いのがそんなに得意じゃない」という声もありました。また、「妊娠中で刺激物を避けている」という話も耳にしました。そこで、「辛くないカレー」というアイデアが生まれたわけです。
―weeeat!編集部
グリーンカレーを辛くせずに美味しくするのって難しくないんですか?
―日向さん
辛さを感じる唐辛子を使っていませんが、ココナッツミルクにハーブの香りをきかせて仕上げることで、“辛さ以外はグリーンカレー”という商品が完成しました。辛さが苦手な方やお子様にもおすすめです。
―weeeat!編集部
この「辛くないシリーズ」も、ご自身や身近な方の「あったらいいな」を実現した無印良品らしい商品ですね。他にはどのような商品がありますか?
現地の人の声を聞いて生まれた「ジビエカレー」
―日向さん
ジビエのカレーも、無印良品らしい商品ですね。「素材を生かしたジビエのカレー鹿肉とマッシュルームのカレー」と「素材を生かしたジビエのカレー猪肉と3種の豆のカレー」の2種類があります。
Café&Meal MUJIで商品開発を担当していた時、ジビエの料理を取り入れたいと思っていました。まずは現地に行こうと思い、シカは大分、イノシシは長崎を訪れて、動物の解体から体験したんです。
―weeeat!編集部
やはり、現地に行くんですね!
―日向さん
そうです。現地で様々な方から話を聞くと、増えすぎたシカやイノシシが生態系や農林業に深刻な被害をもたらしていることを知りました。また、ジビエ料理を提供するレストランは増えているものの、食肉として使われる部位は限られており、残りの部位は使いきれないことも。
あと、ジビエのレストランって少し高級で敷居が高いイメージがありますよね。
こうした問題に対して出てきたアイデアが「ジビエのカレー」です。カレーならば、使い切れなかった部位もミンチにしてムダなく使うことが出来ます。また、カレーならばより多くの方に手軽にジビエを楽しんでもらえるのでは、と。まずは外食で販売するようになり、その後レトルトカレーとしても商品化することになりました。
―weeeat!編集部
なるほど。そのような問題意識からアイデアが浮かんだのですね。私たちもいただきましたが、ジビエ料理にありがちな肉の臭みや硬さのようなものがなく、美味しかったです。
今こうやってお話しを聞いて、初めてこの商品に込められた想いを知りました!
使われずに捨てられる原料や素材に価値を見出す
―中村さん
そうですね。素材を美味しく、最後まで使い切るという考え方は、創業当時から連綿と引き継がれてきた私たちの哲学のようなものです。息を吸うようにずっとやってきたこと。
―weeeat!編集部
めっちゃかっこいいじゃないですか!
―中村さん
そうですね。例えば、40年前に発売した割れ椎茸。カタチや見栄えが悪くても、ダシをとったり切ったりして使う分には味は変わらないという発想で、不揃いのものや割れたものを手に取りやすい価格で販売してきました。
また、鮭の缶詰もそうです。見栄えを良くするために、形が整った胴体の部分を使うのが一般的ですが、頭や尻尾の周りについた身もムダなく使うことを提案してきました。
ジビエもまさにそうで、畜産が地球温暖化に与える影響が懸念されているなかで、活用されていない原料や素材に価値を見出し、カレーという商品に活用しました。
―weeeat!編集部
SDGsが注目される前から、同じような考え方がベースになっているんですね。これからも、そのような取り組みは続いていくんですね。
―中村さん
もちろんです。当社は2021年9月を第二創業と位置づけ、新たに企業理念を再定義しました。それは「人と自然とモノの望ましい関係と心豊かな人間社会」を考えた商品、サービス、店舗、活動を通じて「感じ良い暮らしと社会」の実現に貢献するというものです。これまでの「感じ良い暮らし」に「社会」の要素が加わりました。
日本の食料自給率の低さが声高に叫ばれていますが、私たちが価値を見出せていない素材はたくさんあるはずです。私たちにできることはまだまだあります。レトルトカレーだけでなく、他の商品でも、外食(Café&Meal)の領域でも展開していきたいです。
―weeeat!編集部
楽しみにしています! 今回はカレーを中心にお話しを伺いましたが、ジャージー牛乳のアイスにも想いやストーリーがあると伺いました。是非、次回に詳しく聞かせてください!
次回は、知る人ぞ知る人気商品「素材を生かしたアイス ジャージー牛乳」についてお話しを伺います。「自分マーケティング」や、サステナブルな価値観から生まれた、こちらも無印良品らしい商品でした。
無印良品の開発担当に聞く!#3 ~隠れた人気商品「素材を生かしたアイス ジャージー牛乳」に込めた生産者への想い~
企業情報
企業名:株式会社良品計画
無印良品の商品は店舗または公式通販サイトにて購入できます。
公式通販サイト:https://www.muji.com/jp/ja/store
Instagram:https://www.instagram.com/muji_global/