" 作り手"こそ豆腐の魅力!美味しい豆腐を未来へ残すためにできること #3

weeeat!編集部のレシピ開発担当、栄養士で豆腐マイスターの山崎が、豆腐の魅力を余すことなくお伝えするシリーズ。今回は、豆腐マイスター協会理事長の磯貝さんに豆腐への熱い想いを聞いてきました。長年豆腐に携わってきた磯貝さんが語る、豆腐への深い愛情、知られざる魅力、そして未来への展望とは?
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小さい頃から豆腐屋さんがすぐそばに
―weeeat!編集部
前回は、豆腐腐の歴史や美味しい食べ方など、貴重なお話をお聞きしました。
最後に、磯貝さんご自身のことについてもお伺いしたいです。
豆腐マイスター協会の理事長として活躍されている磯貝さんですが、そもそも、なぜ豆腐業界に入られたのでしょうか?
―磯貝さん
私の母親方の実家が豆腐の製造器具を作っている会社でした。私の祖父は戦後、豆腐の凝固剤の製造を始め、後に豆腐製造器具も手掛けるようになりました。その為、実家は豆腐製造器具メーカーとして、多くのお豆腐屋さんとお付き合いがあったんです。
小さい頃は、よく母と車で豆腐屋さんへ行っていましたね。そこで豆腐屋さんとお話したり、飴をもらったり、懐かしい思い出がありますね。
最初はIT業界でキャリアをスタートさせましたが、転職を機に、祖父の代から続くお豆腐屋さんとの繋がりを活かし、ITの知識を豆腐業界で役立てたいと考えるようになりました。
―weeeat!編集部
小さい頃から、お豆腐屋さんが身近な存在だったんですね。
日本全国、豆腐屋さんに会いに行く
―磯貝さん
でも、当時は豆腐の知識が全くありませんでした。それなら片っ端からお豆腐屋さんに話を聞いてみよう! ということで北海道から九州まで全国のお豆腐屋さんに会いに行ったんです(笑)。
―weeeat!編集部
全国!? いきなり飛ばしていますね(笑)。
―磯貝さん
これで豆腐の知識をつけることができたのですが、それ以上に感動したことがありました。
豆腐を作っている豆腐屋さんが面白かった。みなさん豆腐作りに熱い想いを持っており、技術を極限まで高めようとしている。いわば、“変態”の域まで達した人がいっぱいいるんです(笑)。
そんな豆腐屋さんの役に立ちたいという想いから、豆腐業界専門のコンサルティング会社「とうふプロジェクトジャパン」を立ち上げ、豆腐業界に飛び込みました。
豆腐マイスターを立ち上げた3つの理由
―weeeat!編集部
素敵ですね! 磯貝さんは、豆腐マイスター協会の運営もされていますよね。私たちも先日受講しましたが、豆腐を食べ比べしたり、実際に作ったり、とても楽しく豆腐の知識を身に着けることができました。
―磯貝さん
ありがとうございます! 豆腐マイスターを立ち上げた理由の一つは、若い世代の豆腐離れへの危機感です。現代では豆腐を食べなくても生きていけるので、このまま日本の食文化から豆腐が失われてしまうのではないかと思ったんです。なので、若い世代の方々に受講していただけてうれしいです。
―weeeat!編集部
日本の伝統食を未来に残すために始められたんですね。正直のところ、私も今まであまりこだわって豆腐を買ったことがありませんでしたが、今はスーパーの豆腐売り場に行くのが楽しくなりました。
―磯貝さん
2つ目は、豆腐の安売り競争に歯止めをかけ、美味しい豆腐を選べる消費者を増やしたいと思ったからです。豆腐の価格は下落傾向にあり、一丁100円だったものが60円まで下がっています。約4割も減っているんです。この価格競争を食い止め、価格の違いが味の違いに繋がることを理解し、美味しい豆腐を選べる人を増やしたいと考えています。
―weeeat!編集部
何も知らなかったら、安いお豆腐を選んでしまうと思います。実際に今までそうでした。今は、お豆腐屋さんのお豆腐を食べてみたいと思うようになりました。
―磯貝さん
最後の理由は、料理に詳しい人でも豆腐に関する知識は意外と乏しいと感じたからです。例えば、油揚げと豆腐が同じものだと勘違いしている人が多いなど、豆腐に関する正しい知識を広める必要があると考えました。
―weeeat!編集部
私も勘違いしていました。
―磯貝さん
そう、意外と知られていないんですよ(笑)。このように、豆腐の価値向上と業界活性化を目標に、豆腐マイスター協会を設立しました。
若者が変える豆腐の未来
―weeeat!編集部
豆腐屋さんは年々減っていると習いましたが、どれくらい減っているのでしょうか?
―磯貝さん
今は、年間400件ほどが廃業していると言われています。その背景には、「儲かりにくい」という現実があります。かつては利益率7~9割という高収益でしたが、今は状況が大きく異なります。大豆の高騰や衛生管理のための設備投資など、原価は上昇する一方なのに、売価は下落傾向。この厳しい状況下で、子どもも継がなくなり、廃業を選ぶ豆腐屋さんが後を絶たないのです。倒産ではなく廃業が多いというのも、この業界の特徴ですね。
―weeeat!編集部
後継者不足も深刻なんですね。
―磯貝さん
昔のお豆腐屋さんはかなり儲かったので、子どもたちは良い大学を出て一般企業に就職をすることができました。そうすると、親も子どもに「無理に実家を継がなくてもいい」と考えてしまうのです。
しかし、最近では20~30代の若者を中心に、一度一般企業に就職してから家業を継ぐケースが増えてきています。「社会的意義のある仕事」という点に魅力を感じ、従来の商売のやり方を変えれば活路が見出せると考えているようです。
―weeeat!編集部
それは希望が持てますね!
豆腐の魅力は「作っている人」
―weeeat!編集部
続いて、磯貝さんが思う豆腐の魅力を教えてください。
―磯貝さん
先ほどもお伝えしましたが、ひと言で言うと、「作っている人」が魅力ですね。豆腐屋さん一人ひとりが魅力なんです。豆腐って同じ大豆を使って同じにがりを使って作っても味が全く違う。お豆腐屋さんは、毎日そこを突き詰めて、美味しいお豆腐を作ろうとしています。この姿勢が本当に魅力的です。
―weeeat!編集部
とっても素敵! 作っている人の想いを知って食べるとさらに魅力的に感じますよね。
―磯貝さん
ぜひ、街の豆腐屋さんを訪ねてみてください。人情味あふれるお店やこだわりの豆腐を作るお店など、色んな魅力を持った豆腐屋さんがたくさんありますよ。
―weeeat!編集部
そういえば、私も子どもの頃、近所のお豆腐屋さんでいつも豆腐を買っていました。初めてのおつかいも、お豆腐屋さんだったことを思い出します。母からもらった小銭を握りしめ、ドキドキしながらお店に向かうと、やさしいおばあちゃんが迎えてくれ、おまけに油揚げをくれました。今でも忘れられない味です。
美味しい豆腐を選べるようになってほしい
―weeeat!編集部
最後に、今後実現したいことについて教えてください。
―磯貝さん
豆腐の価値を多くの人々に伝え続け、その担い手を増やすことが私の目標です。現在、豆腐の価格は下落傾向にあり、お豆腐屋さんの数も後継者不足による廃業などで減少しています。消費者の皆様には正しい知識を身につけ、様々な豆腐の中から本当に美味しい豆腐を選べるようになってほしいと願っています。
―weeeat!編集部
私たちも豆腐マイスターの一員として、豆腐の魅力を発信し続けていきたいです!
今日は貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。
プロフィール
日本豆腐マイスター協会理事長 磯貝剛成さん
ウェブサイト:https://mytofu.jp/
Instagram:https://www.instagram.com/tofumeister/
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